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2020.08.24

『タオと宇宙原理』はじめに

◆はじめに

あなたは何故〈あなた〉なのだろうか

〈世界〉は本当に存在しているのだろうか

 なんと、この世界はたった四つの力とたった二種類の素粒子とで出来ていたのである。それは知れば知るほど驚きの、余りに単純すぎる原理である。

 斯書では、宇宙物理学の法則を紹介しながら、筆者の専門の仏教哲学や東洋思想とりわけ老子の哲学を通して、〈存在〉の真実について解き明かそうとする試みの書である。一般向けに物理学や哲学が苦手な人にも出来るだけ分かりやすく書いたつもりであるが、後半は少し難解な所があるかも知れない。

 この宇宙は自然発生的に誕生したと従来考えられてきたが、ここにきて「人間原理説」が唱えられるようになり、その背景に、神ならぬ宇宙意志の存在を認める動きがヨーロッパ系の学者の間に広まっている。更には、我々の宇宙以外の多次元宇宙までもが数式で導き出されるようになり、物理学は神の領域に入り込んだようだ。そして、遂に彼らが言い出したことは、この世が存在しないということである。

 実は、仏教は二千五百年前から量子物理学が解明した真理についてまったく同じ事を語ってきているのである。また、最終章は老子の哲学にも触れ、タオとは何かを解説している。それは、人間の存在そのものであり、仏陀が存在を全否定するのに対し、老子は無為の世界を通して存在を全肯定してみせるのである。そのどちらもが、人間存在の実存性と超越を示しており、凡夫が如何にして生きるべきかを示している。当初予定より大幅なページ増となり五百頁を越えたことは、本が売れないことに等しく悩ましいところではあったが、読者にあられては、どこからでも興味の湧く箇所から読み進めて頂ければと思うのである。勿論、前章から読み進めないと理解が困難な所もあるが、気にせず、流し読みをして頂くだけで充分ご理解頂けるように書いた。特に、一章には斯書の全体像が分かるように、その要諦を述べている。

 斯書の最大の特徴は〈言語次元〉というまったく新しい概念について分析を試みていることである。それは、人類の進化の過程でもあり、〈叡智言語〉の獲得の重要性を説いている。更には、重力に関わる原理と人間の精神原理の同一性を分析しているのも世界初の試みであり、興味を抱いて頂ければ幸いである。それは我ながら実に興味深い内容であった。そして、それらの事実を通して仏陀とは何か、解脱なる超自我の覚醒とは何を意味しているのかに言及している。唯物論的還元主義では理解できない深遠なるタオの世界と理論を紹介する。

 猶、名を森神から森上に改めたことをここにご報告し、読者のご理解を請うものである。

二〇二〇年八月五日 森上逍遥 識