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2020.08.08

時代は変わる

 時代はいつも若者に力を与えてきた。サルトルもその一人だったのかも知れない。そしてビートルズ同様に、いやそれ以上に、サルトルは知的エリートに強い影響を与え、政治的行動を促したのである。アンガージュマン。政治的行動を為せ! それは時代の合言葉であった。

 いまわれわれは時代というその全貌を俯瞰することができる。世界中が揺れ動いた社会主義革命は百年もつことなく崩壊した。人びとは人間というものの愚かさをそこに見つめることで、その試みの価値を見出し、次の社会革命へといまだ夢見ている者がいることもまた事実である。そこには社会への不条理観が多くの人たちにあることを意味している。果たして次の文明がいかなる理論や主義をもって社会変革へと挑んでくるのかは分からない。

 しかし一つだけはっきりしていることがある。それは必ず時代は変わるということである。ある時思いもしない大飛躍があることも未来の決まり事と言うことができるだろう。次の時代はAI(人工知能)革命であることは間違いない。それに対して、人類はどこまでそれを使いこなし制御しうるのかが次の課題となるだろう。既述のように、AIと人類の戦いがSF映画よろしく現実化することを、われわれは思考しておく必要がある。もしかすると百年後の近い未来において、人類はAIに滅ぼされる可能性すらあるからである。これは決して酔狂で語っているのではない。

 いまや日本人はすっかり無神論者である。唯物論者が過半数であり、知識人にいたっては9割方がそうかも知れない。だが、分析哲学において新たな動きとして形而上学(神)の分析が始まったように、無思考のうちに唯物論者へとなることは決して知性が高いことを意味しないことを知るべきである。因みに私も無神論である。ただし、仏教的無神論者である。その意味で唯物論者ではない。アインシュタインが信仰者であったことは知られているが、最新の理論物理学の世界ではパラレルワールドの世界が実証されつつあり、自分が他の次元宇宙に無数に存在するなどという奇想天外な理論が出てきたのである。さらに驚くことは、なんと〈創造者〉(宗教の神ではない)も数学や物理でその存在が語られるようになってきていることである。

 天動説が地動説へと科学的証明がされることでキリスト教に呪縛されていた人たちが無神論者へと転じていったように、次の世代では無神論者が有神論者へと鞍替えをする日が来るかも知れない。いつの時代も哲学は科学理論や実証によって大きく影響を受けて来た。現代のわれわれも自然科学の発達と共に、さらなる先に目をやり続ける必要がある。その中で、自分の存在、人間の存在、世界の存在について真摯に向き合わねばならない。だからこそ〈自然哲学〉の必要性を私は説くのである。そこは生得の善意識と科学が融合する世界であるからだ。

(『人生は残酷である』第一章 自然哲学への憧憬 サルトルの屈折とアンガージュマン)