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2020.10.06

『タオと宇宙原理』〈43〉第一章 刹那生滅

 少しだけ解説をすると以下のようになる。仏教では、この世の原理法則のことを有為法(ういほう)という。つまり、迷いの世界を支配している原理ということになり、それらには全て無常の性質が有される。無常とは常住でないということであり、ここに述べる刹那生滅を意味することになる。

 時間なり存在が生じてから滅するまでを四相(四有為相)に別して「生(生じ)」「住(維持し)」「異(変異し)」「滅(消滅する)」となす。「生」とは未来から現在への〈法〉の移行を意味しており、「住」とは現在相に出現した〈法〉の一刹那の存在(作用)を意味し、「異」とは現在相から変異することであり、「滅」とは〈法〉が現在相から消滅し、過去相へと落謝(らくしゃ)(移行)することを意味する。これを「三世実有(さんぜじつう)法体恒有(ほったいごうう)」という。これは、有部が主張した刹那滅の説である。ここでは未来も現在も過去も法が実在していると説くもので、すなわち未来も現在も過去も、現在を有ると我々が実感する如くに実在するというのである。この事は、この後にも何度も語ることになるが、アインシュタインの特殊相対性理論の中で示されていることであり、その意味では、瑜伽行派が主張する現在一刹那のみが実在するとする「現在有体(げんざいうたい)過未無体(かみむたい)説(せつ)」より有部の三世実有説の方が現代物理学とは一致する。相対性理論と同様に仏教の有部は、未来と現在と過去を等価と見るのである。

(『タオと宇宙原理』第一章 意識と科学 古代の叡智と量子仮説 刹那生滅)