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2020.09.06

『タオと宇宙原理』〈13〉第一章 科学者の傲慢

 ただし、彼らの批判的概念としての「神秘主義者」という言葉はいただけない。東洋哲学の最高峰に位置する老子の思想は、将に神秘主義の名をほしいままにしているからである。仏陀と並ぶこの最高の叡智を侮辱するかの如き表現は、東洋人の我々は見過ごすわけにはいかない。

 また、人智を越えた神秘性というのは、我々の感性の中に明らかに出現するからである。鈍感な思考優位型の人たちには感じ得ないことだろうが、芸術家を中心に、その種の人たちの精神(魂)の奥に垣間見え心惹きつけられる神秘性を、多くの人は感じ取るからだ。彼らが批判する神秘主義者とは、要するにいかがわしい嘘の神秘を売り物にした権威主義者であり、明らかな詐欺師でしかないはずだ。だが、しかし、そうではない知性を有する純粋な精神までをも、彼らは同列に批判の対象としてしまっている。つまり彼らの問題は、この種の幼稚な宗教的なるものを以て全宗教の否定に陥っている点である。彼らとは真逆に立脚する物理学者のアインシュタインやマックス・プランクらが言うように、心を癒やす信仰の世界があることは美しいということを否定できないのではないかということである。

(『タオと宇宙原理』第一章 意識と科学 古代の叡智と量子仮説 科学者の傲慢)